生駒の山寺・天龍院に通じる山道の朝鮮寺、廃寺探訪レポート
|大阪と奈良の境にあたる生駒山は、霊山として知られています。霊山・生駒を象徴するのは宝山寺かも知れませんが、それは奈良側の話です。
大阪側には無数の寺があり、その多くは朝鮮寺と呼ばれる特殊な寺であることをご存知でしょうか。朝鮮寺とは古くから在日韓国人、とりわけその中でも女性向けの寺として長らく信仰を集めてきました。
しかし、それも昔の世代の話。今の若い世代になると存在すら知らない人もいるそうで、寺を維持できなくなったところも多々あります。
そんな廃寺が生駒山の各地にあるということで、前から気になっていました。
Googleマップにも詳しい情報がない、実際に行ってみるとGoogleマップですら正確な情報が載っていない、さらにネットにもあまり情報がないので、これは行ってみるしかないというわけでカメラを持って行ってきました。
これは、その朝鮮寺、廃寺探訪のレポートです。
まずは、この一連の寺がある場所の確認から。
広域地図だと、この辺りです。
第二阪奈道路と、全国有数の酷道として名を馳せる暗峠の間です。
近鉄の額田駅から山を登るルート、額田谷と呼ばれる山道沿いにあります。
では、赤い囲みの辺りをアップにしてみましょう。
左側が近鉄額田駅や住宅地がある部分で、右に行くほど山を登るルートです。
というわけで、天龍院が一番上にあります。
寺同士の位置づけを見ても、この天龍院が親玉でそこに至るルートに大小さまざまな寺があるというイメージです。
途中には「大韓佛教観音寺」という、アレな名前の寺も見て取れます。
これはやっぱり気になる・・・。
近鉄の線路近くは、まだ住宅地です。すでに結構な坂道だらけです。
住居表示も、その名の通り山手町。
以後、山道沿いの山寺がある辺りも全て山手町です。
何気ない住宅地の路地を左に曲がると、山道に続く坂道です。
写真でも分かると思いますが、かなりの勾配です。
郵便配達のバイクが「有り得ない音」を鳴らしながら登って行きました。
坂道の先に緑が見えますが、住宅地はそこまでです。
住宅地を抜けると、いきなり人里から離れた雰囲気になります。
何の表示板もなく、突然人家がなくなります。
後ろを振り返ると、すでにずいぶんな高さに来ていることが分かりますね。
ここから少し上がっていくと、ようやく天龍院に続く道の案内が出てきます。
これだけだと、まだ単に「天龍院はこちら」というだけで、廃寺の怪しげな雰囲気は感じられません。
なぜかエアコンの室内機、室外機がセットになって捨てられていますw
山道が始まって一発目の建物は、天龍院の里坊。
今も営業してるのかどうかは不明です。
もはや、さっきまでの住宅地の面影はありません。
ようやく期待していた雰囲気になってきましたね!
地図で見ると、ここになります。
天龍院里坊から上がってすぐのところに、次に登場するのは光林寺です。
地図にもバッチリ表示がありますが、現実はこの有り様です。
この寺の関係者には申し訳ないですが、いよいよ廃寺の登場です。これですよ、これ!
元・光林寺のすぐ上にも、もうひとつ建物があります。
もはや廃寺なのかどうかも判別できない廃墟です。
光林寺の庫裡だったんでしょうか、それともアーケードの感じからして商店か何か?
今やそれを知る術はありません。
引き続き、山道を進みましょう。
しばらく何も人工物がない道を急勾配の道を登って行くと、少し平らになったところで建物が見えてきました。
地蔵院という小さな寺です。
中から木魚を叩く音が聞こえたので、お勤め中のようです。
ということは現役です。
左に見える山道を、先に進みましょう。
またもや急勾配になってきた道を登ると、左側に建物が見えてきます。
正面に見えるご本尊が、いい感じで苔むしています。
どう見ても宗教施設なので、現役の寺でしょうか。
開雲寺という寺でした。
中に住職らしき人の姿が見えたので現役なのは分かりますが、Googleマップには表示されていません。
場所はここなので建物は表示されているんですが。
まさか新しく開いた寺ではないと思うので、実地探訪がGoogleを超えた瞬間です。
地図を見ると、次は月宮寺院です。ちょっと変わった名前なので朝鮮寺を証明するようなものに出会えるかと期待して先を進みます。
まずは何だったのかすでに分からない廃墟が登場です。
手前にあるのは五右衛門風呂かと妄想してしまうような、味のある廃墟です。
その廃墟のすぐ上にあるのが、月宮寺院です。
が、しかし・・・
ご覧の通り、廃寺です。
廃寺になってかなり年数が経ってることを示すように建物が傾き、そこら中が苔むしています。
ここも間もなく腐海に沈むことでしょう。
ところでこの月宮寺院は、地図にはバッチリ表示があります。
すぐ隣にある現役の寺が地図にないのに、廃寺が立派な寺であるかのようにGoogleマップに登場しています。
こういうパターンに何度か遭遇していると、ますます怪しい・・・。
ところで、元・月宮寺院の道向かいには地蔵が鎮座しています。
すでに主を失ったお地蔵さん、誰が管理しているんでしょう。
ここからしばらく、建物はありません。ひたすら上り坂の山道が続きます。
途中にはお地蔵さんが鎮座していますが、これも誰かが管理しているようです。
こういうのを見ると、やはり霊山ということを実感しますね。
しばらく坂道を登ると、ようやくまた建物が見えてきました。なかなか立派な佇まいです。
もっと近づいてみると、これは正覚寺です。
この正覚寺には、門の隣に奉納者の石板があります。
奉納者の名前を見ると、明らかに韓国名の人がズラリ。
山登りを始めて、ようやく朝鮮寺の証しを見つけました。
地図では、この正覚寺の上にあるのが大韓佛教観音寺です。
これはもう、名前からしてアレなので期待しつつ先に進みましょう。
次に見えてきた建物は、どうやら廃墟のようです。
川を渡る橋の廃墟っぷりがいい感じと思っていたら・・・
どうやら、これが大韓佛教観音寺のようです。
地図の位置で確認しても、間違いありません。
廃墟を見ても立派な建物であることが伝わってくるので、在りし日はさぞや立派な寺だったのでしょう。
寺に通じる橋がこれだけ朽ち果てても威容を放っているあたりに、結構萌えます。
探訪に来る前に地図で寺を見ている時、名前を見て最も期待していた寺でしたが、かなり前に廃寺になってしまったようですね。
さようなら、在りし日の大韓佛教観音寺。
橋のすぐ隣にはお地蔵さんが。これも主を失ってしまったのに、誰かが管理をしているようです。
地図の表示では、この次は山頂の天龍院になるはずです。
そこに至る道は結構長いように見えましたが、実際に歩いてみると一番長い道のりでした。
ここまで廃寺をいくつも見てから人工物が出てこない道が続くと、「本当にこの先に何かあるのか?」という不安もよぎります。
昼間というのにこの暗さなので、これも不安を煽ります。
20分くらい歩いたでしょうか、ようやく何かが見えてきました。
お地蔵さんや仏像、観音像、本尊などなど。
かなり立派なものが出てきたので、いよいよ山頂の天龍院が近いということでしょうか。
と思ったら、また閑散とした道になり、時々お地蔵さんがあるという風景に逆戻りです。
また歩くこと10分ほど、ようやくまた建物が見えてきました。
ここから先は道沿いに色々と出てくるので、天龍院が近いと見て間違いないようです。
それにしも、ここまでの道のりを考えるとこれだけの石像をいったいどうやって運んできたのかと思うと、昔の人のパワーを感じずにいられません。
ここからはまた急勾配になってくるので、ほぼ階段のような山道を進みます。
地図の順序で見ると、次に見えてくるのは天龍院のすぐ下にある長尾山六苑普門寺のはずです。
地図通りであれば、右側に見えてくるはずです。
右側に建物らしきものが見えてきました。これでしょうか。
建物の前に着きました。
建物の看板には「長尾山六苑普門寺」と書かれています。が、しかし・・・
目の前に何か倒れているのが見て取れますが、これは山門です。
すでに山門が倒れたまま放置された廃寺でした。
結構立派な寺で、中には鳥居も見えます。
神仏習合の由緒ある寺社だったのかも知れないのは、立派な石柵を見ても分かります。
廃寺になっているとは言え、この長尾山六苑普門寺を過ぎればいよいよ次はゴールの天龍院です。
先を進むと、今度は倒れていない山門が見えてきました。
どんどん登って行きましょう。
山門を抜けて登って行くと、右側に滝が見えてきます。
滝の前には山門があります。
この天龍院には長尾の滝が名所になっています。
長尾の滝は2つの滝から成り立っていて、山頂にある滝を雄滝、ここにある滝を雌滝といいます。
なんでそんなことを知っているのかというと、ここに書いてあったからですw
滝の荘厳さもさることながら、ここがまだ東大阪市であることに改めて驚愕した次第です。
ここを少し上がると、遂に見えてきました。
天龍院の入り口です。
入り口の右側にはお稲荷さんがあります。
こんな山の中にお稲荷さんの赤鳥居を見ると、伏見稲荷の奥の院を思い出します。
天龍院に上がると、そこには雄滝があります。
邪気払いにご利益があるそうで、なかなかイカつい感じの本尊が鎮座しています。
長尾の滝は聖域でもあるので、こんな注意書きも。
ここに入るかなり前から空気が変わってくるのを感じましたが、かなり強めのパワースポットなんでしょうね。
2つある本殿に手を合わせて、天龍院でのご挨拶も完了しました。
朝鮮寺と廃寺を探訪するという興味本位で登り始めた山道でしたが、山道を進むに連れて期待通りの風景もありましたが、天龍院に登り詰めた時には何か荘厳な気分に変わっていました。
これだけ苦労して登ってくることに意義があるので、パワースポット好きな方にはいいかも知れません。
ただし、このレポートにもあるようにGoogleマップはアテになりません。しかも途中から携帯もずっと圏外になるので、大阪近郊にあるものの秘境であることもお忘れなく。
以上、前から気になっていた生駒の朝鮮寺、廃寺探訪のレポートでした。